皆さん、こんにちは!
最近、MLBの試合を見ていて、「やけに盗塁を試みる選手が増えたな」「しかも、面白いように成功しているな」と感じたことはありませんか?
それは気のせいではありません。2023年シーズンを境に、MLBの盗塁数は劇的に増加しました。かつてはホームランの影に隠れがちだった「走る野球」が、今、劇的な復活を遂げているのです。
その背景には、3つの大きなルール変更がありました。
すべてを変えた「3つの新ルール」
① 牽制制限:走者の”心理的セーフティネット”
これが最も大きな変更点です。投手は、打者が一人の打席中に、プレートを外す行為(牽制や、単に外すだけも含む)を2回までしかできなくなりました。
そして、もし3回目の牽制を行って、ランナーをアウトにできなかった場合は、「ボーク」が宣告され、ランナーは自動的に次の塁へ進むことができます。
これにより、ランナーは「2回牽制が来たら、もう3回目はほぼ来ないだろう」という、非常に大きな心理的アドバンテージを得て、大胆なリードを取ることが可能になりました。
② ベースの巨大化:物理的な距離の短縮
一見、地味な変更ですが、効果は絶大です。これまで15インチ(約38cm)四方だった一塁、二塁、三塁ベースの大きさが、18インチ(約46cm)四方に拡大されました。
これにより、塁間の距離が4.5インチ(約11.4cm)短縮されました。これは、盗塁の成否を分けるコンマ数秒の世界では、とてつもなく大きな差となります。わずか11cmですが、この差が多くの「アウト」を「セーフ」に変えているのです。
③ ピッチクロック:投手の”焦り”を生む
以前の記事でも解説した「ピッチクロック」も、間接的に盗塁を増やしています。 投手は常に時間を気にしながら投球しなくてはならず、ランナーに集中する余裕が以前よりも格段に減りました。
クイックモーションで投げたり、執拗に牽制したりといった、ランナーを警戒する細かな技術を使う時間がなくなり、結果的にランナーが走りやすい状況が生まれているのです。
数字が証明する、ルールの絶大な効果
これらのルール変更により、盗塁に関する数字は劇的に変化しました。
- 盗塁企図数: 2022年シーズンと比較して、2023年以降は約40%増加。
- 盗塁成功率: 2022年の約75%から、2023年以降は80%を超える高い水準に。
リスクが減り、成功率が上がったことで、各チームは「盗塁」を再び有効な攻撃オプションとして積極的に使うようになったのです。
新時代を駆け抜けるスピードスターたち
この新しい環境で、特に輝きを放っているのが、ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.選手です。彼は2023年に、史上初となる「40本塁打・70盗塁」という、パワーとスピードを融合させた前人未到の記録を打ち立てました。
彼の他にも、多くの若く才能ある選手たちが、このルール変更を追い風にして、グラウンドを縦横無尽に駆け回っています。
まとめ
MLBが導入した一連の新ルールは、「走る野球」という、野球本来の魅力を現代に蘇らせることに、見事に成功しました。
これからは、ホームランという豪快な一撃だけでなく、一瞬の隙を突いて次の塁を陥れる、選手たちの足と勇気にも注目してみてください。特に、1点を争うポストシーズンの痺れる展開では、たった一つの盗塁が、シリーズ全体の流れを決めてしまうかもしれませんよ。
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