2番に最強打者を置くのはなぜ?日米でこんなに違う「打順の考え方」

コラム・雑談

皆さん、こんにちは!

野球の試合を観ていると、両チームの監督が発表するスターティングラインナップに、ファンは一喜一憂します。

そして、日本のプロ野球(NPB)に慣れ親しんだ我々が、MLBの打順を見て最も「おや?」と感じるのが、「2番打者」の役割ではないでしょうか。

今回は、この「2番打者」を象徴として、日本とアメリカの打順に対する考え方の違いを、徹底的に解説していきます。

1. 日本の伝統的な考え方:「繋ぎの野球」

まずは、我々がよく知る日本の伝統的な打順の役割をおさらいしてみましょう。

  • 1番: 出塁率と足の速さが武器の「チャンスメーカー」
  • 2番: バントや右打ちで、1番ランナーを確実に二塁へ送る「繋ぎ役」
  • 3番: 高打率と長打力を兼ね備えた、「好打者」
  • 4番: チーム最強の「ホームランバッター」

これは、「1点を確実に取りにいく」という、いわゆる「繋ぎの野球(スモールボール)」の思想に基づいています。1番が出塁し、2番が犠牲になって進塁させ、3番・4番で還す。一つひとつのアウトを大切にしながら、パズルのように得点を組み立てていく、緻密な野球です。

2. 現代MLBの考え方:「得点期待値」の最大化

一方、現代のMLBでは、全く違う思想が主流となっています。 それは、「シーズンを通して、最も多くの得点を生み出すためには、最も優れた打者に、最も多く打席を与えるべきだ」という、データに基づいた考え方です。

1シーズンでは、打順が早いほど、打席数は多くなります。 1番打者 > 2番打者 > 3番打者 > 4番打者…

この事実を基に、現代のMLBでは以下のような打順が「最適解」とされつつあります。

  • 1番: チームで最も出塁率が高い強打者(足の速さは二の次)
  • 2番: チーム最強の打者
  • 3番: チームで3番目に優れた打者
  • 4番: 伝統的なホームランバッターだが、必ずしも最強打者ではない

3. なぜ「2番最強打者説」が生まれたのか?

なぜMLBでは「2番」に最強打者を置くのでしょうか?データは、その合理性を明確に示しています。

  • 理由①:打席数が多くなるから 4番打者よりも、2番打者の方がシーズンを通して約30回も多く打席に立てます。最強の打者の打席機会を、少しでも増やすべきだという考えです。
  • 理由②:得点チャンスの場面で回りやすいから 統計的に、初回に最も得点期待値が高いのは「無死一塁」の場面、つまり1番打者が出塁した場面です。その最高のチャンスで、最強の打者に打席を回したいのです。「犠牲バント」でわざわざアウトを一つ増やす行為は、長期的に見ると得点の可能性を下げてしまう、と考えられています。

マイク・トラウト、アーロン・ジャッジ、そして大谷翔平。現代MLBを代表する最強打者たちが、キャリアの全盛期に「2番」で起用されてきたのは、この思想に基づいているのです。

まとめ

「繋ぎの野球」と「得点期待値の最大化」。どちらが正解というわけではありません。 日本の野球が持つ、1点を緻密に奪い取る美しさ。そして、MLBが持つ、最強の布陣で相手を真正面から打ち砕く豪快さ。

そこには、それぞれの国が育んできた野球文化と哲学の違いが、色濃く表れています。 この「打順」の違いを知ることで、あなたはメジャーリーグの監督が描く、壮大な戦略図の一端を垣間見ることができるようになるでしょう。

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