皆さん、こんにちは!
ワールドシリーズが終わり、ストーブリーグが始まると、ニュースで「〇〇選手がノンテンダーになりました」という言葉を耳にすることがあります。
時には、主力級の選手や、日本でも有名な選手がこの「ノンテンダー」を通告され、驚くこともあります。
「DFA(戦力外)」とは何が違うの?
なぜ、まだ活躍できそうな選手が放出されるの?
今回は、MLBの契約社会の厳しさを象徴する「ノンテンダー」の仕組みについて、分かりやすく解説します。
1. 「ノンテンダー(Non-tender)」とは?
「Tender」には「申し出る、提出する」という意味があります。つまり、「Non-tender」とは、球団が所属選手に対して「来シーズンの契約を提示しない(=契約しない)」ことを指します。
ノンテンダーを通告された選手は、即座に「FA(自由契約選手)」となり、全球団と自由に交渉できるようになります。
この手続きが行われる期限(ノンテンダー・デッドライン)は、例年11月中旬から下旬に設定されています。
2. なぜ「ノンテンダー」にされるのか?
ここが一番のポイントです。選手がノンテンダーにされる最大の理由は、「実力不足」ではありません。
ズバリ、「予想される年俸が、実力に見合わなくなりそうだから(コスパが悪い)」です。
これには、MLBの「年俸調停(Arbitration)」という制度が深く関わっています。
- メジャー3年目〜6年目の選手:この期間の選手は「年俸調停権」を持ちます。これを持つと、毎年のオフシーズンに、成績に応じて年俸が大幅に上昇する仕組みになっています。
しかし、ここで問題が起きます。
「成績はそこそこだけど、ルールの仕組み上、来年の年俸が5億円から10億円に上がってしまいそうだ…」
球団はこう考えます。「彼は良い選手だけど、10億円払うほどの価値はないな(代わりの若手なら8000万円で使えるし…)」
こうして、「高い年俸を払ってまで契約延長したくない」と判断された時、球団はその選手を「ノンテンダー(契約提示なし)」にして放出するのです。
3. 「DFA」と「ノンテンダー」の違い
「DFA」と混同しやすいですが、目的とタイミングが明確に違います。
| 項目 | DFA (Designated for Assignment) | ノンテンダー (Non-tender) |
| 主な目的 | 「40人枠」を空けるため | 「コスト(年俸)」をカットするため |
| タイミング | シーズン中も含め、いつでも | オフシーズン(11月下旬)の期限日 |
| ニュアンス | 「君の席(枠)がなくなった」 | 「君の年俸は高すぎる(契約しない)」 |
| その後 | トレード、ウェーバー、マイナー降格など | 即座にFA(自由契約) |
【あわせて読みたい】 DFAについておさらいしたい方は、こちらの記事をチェック!
4. ノンテンダーは「チャンス」でもある?
「ノンテンダー=クビ」という響きは怖いですが、選手にとっては悪いことばかりではありません。
- 完全なFAになれる:DFAのようにウェーバー(他球団の指名待ち)を経る必要がなく、すぐに自分の好きな球団と交渉できます。
- 適正価格で再契約:一度ノンテンダーになった後、年俸を下げて元の球団と再契約するケースもよくあります。
実際、ノンテンダーになった後、他球団で安く契約して大活躍し、再び評価を上げて大型契約を勝ち取る選手も珍しくありません。
まとめ
「ノンテンダー」は、MLBが徹底したビジネスの世界であることを象徴する制度です。
「あの選手、今年は活躍したのに、なんで放出されたんだろう?」
そう思った時は、その選手の「年俸」に注目してみてください。「活躍はしたけど、年俸が上がりすぎたから」という、シビアな理由が見えてくるはずです。
この仕組みを知ると、オフシーズンのニュースが、単なる移籍情報ではなく、球団の「経営戦略」として見えてきて、より深くMLBを楽しめるようになりますよ!

コメント